眠れる「知恵」の継承方法
2008.07.03 Thu
団塊の世代の大量退職で、職人・スペシャリストのノウハウが失われることを危惧する声があがっています。会社でも長年同じ部署に勤めつづけたベテランが去った後で、その穴を補充するのに四苦八苦することがあります。そんな問題を解決する一助となる一冊を読んでみました。
「『経験知』を伝える技術〜ディープスマートの本質」 著:ドロシー・レナード、ウォルター・スワップ ランダムハウス講談社
この本は、組織のマネージャー向けに書かれたもので、蓄積された経験知をどのようにして移転して、組織の進歩につなげるかを示しています。ディープスマートとは、経験に土台を置く専門知識のことです。これを移転する目的は、組織の中の知識ギャップを埋めることにあります。ある人が知っていることと、ある課題を成し遂げるために知っておくべきこととの間のギャップのことです。このギャップを埋めなければ、商品やサービスの質が落ち、ひいては企業価値の損失につながる、というわけです。
エキスパート(ベテランと言い換えてもいいでしょう)の長所は、
・意思決定が早い
・具体的な状況認識ができる
・結果を推測できる
・微妙な点の区別ができる
・罠に気づくことができる
・自分の知識の欠落や例外的状況に気づくことができる
逆にエキスパートの短所は「過信しやすい」「先入観にとらわれやすい」「新しい状況に対して、過去の経験を誤用してしまう」といった点です。
まず引き継ぐにあたって、その経験知は自力で育んだ方がいいのか、アウトソーシングした方がいいのかを判断します。個人または組織が直接保持する必要がある場合には、自力で育む方がいい、という結論になります。
経験知を引き継ぐ際には、コーチの存在が必要です。コーチの指導の元で経験を積むのが最もうまくいくとされています。また、スムーズな引き継ぎには、コーチに明確に伝える意思があり、かつ学習プロセスを理解していること、教わる側に主体性があることと、無知をさらけ出す結城があること、が挙げられています。教える側と教わる側の互恵関係があると、さらに良いということです。
ただ、難しいのは「暗黙知」の部分。言葉にするのが難しい場合や、その知識を持っている側が自分の立場を守るために教えようとしない場合、伝承が難しくなります。
京都の伝統工芸は、父から子へ引き継ぐ場合が多く、経験知の継承は家の継承とセットになっているため、大きな問題になることは少ない...はずです。これが会社になるとどうなるのか、やはり、教える側と教わる側が意識高く共同歩調をとることが大切なようですね。

