テレビの未来予想図
2008.06.24 Tue
格差社会、ネットの浸透による個人の嗜好の多様化などなど、世の中にとって「マス」の重要性が失われてきているように感じる中、そこで浮かび上がる疑問を解消するような一冊を発見しました。面白くて一気に読んでしまいました。
「グーグルに勝つ広告モデル」 著・岡本一郎 光文社新書
タイトルは、広告ビジネスについての本に見えますが、テクノロジーと社会の変化のなかで、マスコミの現在の位置づけが非常によくわかりました。特にテレビについて。
今のテレビは最大公約数の視聴者が楽しめるような番組をつくり、視聴率を稼ぎ、スポンサーにとって広告の効率を高めることによって収益を得ています。テレビ局は「マスの獲得」を目指すことが最適なビジネスモデルです。
ところが、その「マス」を追いかけることで、番組内容のシャープさが失われ、失望する視聴者もいます。現に「今のテレビはつまらない」という発言をするヒトは少なくありません。広告も、商品を買ってくれそうなターゲットを絞って展開したいのに、「マス」を追いかけることで、訴えたい内容のピントがボケてしまうこともあります。とすると、コンテンツも広告も「マス」によって、失われるものが大きくなってしまいます。
その一方で、広告の文言よりも、「インターネットでエキスパートの提言や掲示板などでの率直な意見や情報を参考にしながらモノを買うほうが安心できる」と考えて行動するヒトが増えています。ネットの浸透により、広告が効かなくなるかもしれません。ということは、テレビやラジオ、新聞の経営基盤が脅かされる事態が迫ってきていることを意味します。
そこで、著者は提案します。「売上とアテンションが比例するビジネスモデルから脱却すべき」「現状のビジネスと並行する形で、オンデマンドポイントキャスト事業をはじめるべきである。視聴者が求めているのは、高精細な映像よりも、見たいものを好きな時間に見ること。オンデマンド通信で、視聴者の性別・年齢・趣味などがわかれば、それに合わせた広告を流すことができれば、広告一回あたりの単価を上げることができる」
さて、テレビ局がオンデマンドで番組を流すようになると、何が起こるでしょうか。
まず考えられるのは、過去の名作に対する需要が高まることです。「web2.0」でアマゾンのビジネスモデルに現れたような、ロングテールの法則がここで現れます。ドラマやバラエティ、ドキュメンタリーが、音楽や絵画と同じように、過去の名作との厳しい比較・競争を迫られることになりそうです。万人受けするコンテンツよりも、尖ったコンテンツが求められるようになります。本当にそうなるかどうかわかりませんが、コンテンツを楽しみたい我々にとっては、そのほうが面白い時代なのかもしれません。
著者は「マス」の意味は失われつつあっても、「マスコミ」の機能は社会に必要だと指摘しています。インターネットは、見るヒトが、自分の見たい情報だけを集めて終わってしまう。それでは世の中が成り立たない。民主主義の礎としての機能が必要です。そうでなければ、今、社会が抱える問題や、解決すべきことを議論するベースが崩れてしまいます。
ヤフーもグーグルも、ウィキペディアも、新聞社や通信社、テレビ局の原稿を情報源として活用しています。社会の情報ネットワークの基盤は「マスコミ」にあるのです。
つまり、その社会のインフラともいえる「マスコミ」の機能と、広告ビジネスとしての「マス」整合性が失われつつあるということ。ううむ、どうする、どうなる?

