2008.06.22 Sun
今週は、茶室見学ウィークエンド。国宝の茶室、待庵につづいて、この日は佐川美術館の茶室を見学しに行きました。第十五代楽吉左衛門さんが設計した、斬新な現代風の茶室だと評判で、3月から一般の見学ができるようになりました。見学には予約が必要ですが、NHKの「新・日曜美術館」で、完成に至るまでのプロセスが放送されたことで、予約がとても難しくなりました。
見学は、毎週、木金土日祝、各5回。1回10人まで。予約は、1ヶ月前の同日朝から受付開始されますが、週末は特にとりづらいのです。友人に頼んで取っていただきましたが、当日朝から電話して、午前9時半なのに、もう15時〜の最終回しか空いていなかったそうです。
佐川美術館へは、最寄駅のJR湖西線堅田駅から路線バスで向かいました。このバスが1〜2時間に1本しかない貴重な足です。
ゲートをくぐると、そこに広がるのはシルバーでモダンな空間。浅い池に柱が並ぶ姿は、広島の厳島神社をイメージしているそうです。

さて、開始10分前にロビーに集合。ここで見学料300円を支払います。ガイドさんの案内にしたがって、楽吉左衞門館の展示室の横の通路(地下2階)から入っていきます。入口には「守破離」(しゅはり)と書かれた扁額がかけられていました。この茶室のコンセプトのようです。ここから先は撮影禁止でしたので、ガイドさんの解説をメモにしました。
・アプローチは、オーストラリアの枕木(栗)が敷き詰められています。やわらかい感触。視覚的に距離感が感じられるように、通路の幅も奥に向かうにつれて細くなっていきます。天井はベイマツ。
・待合には大きなテーブル。隅に丸い炉が入っていました。インドネシア産のタガヤサンの一枚板。椅子はアフリカの広葉樹、アサメラを使っています。和服で座っても傷まないようにと、滑らかな手触りでした。
・壁はコンクリート。闇のある空間をつくるためにも、できるだけ黒くしたかったそうで、コンクリートに酸化鉄の顔料を配合して、堅さがギリギリ保てるレベルまで、試行錯誤を繰り返したそうです。さらに、乾く前のコンクリートに比叡山の杉板を置いて、木目の表情が出ていました。グレーの板が積み重なっているように見えます。板の幅は、待合で10cm、露地では6cm、広間では4cmと徐々に細くなっていきました。そこにどういう狙いがあったのかは、わかりませんでした。
・露地は円筒状の吹き抜けになっています。吹き抜けの壁に沿って、水が流れ落ちます。壁の段差でチョロチョロと水の音がして、落ち着いた気分になります。ここは聴覚効果を狙ったのでしょうか。
・中潜りを抜けると、まずは3畳半の小間「盤陀庵」(ばんだあん)に着きます。釈迦が修行した「盤陀石」にちなんで名付けられました。ここは水面下の茶室です。
・床柱はバリ島の古材を使っているそうです。
・天井には煤竹(すすたけ)が貼られます。天井の高さは約4mと高く、ひんやりとした空気に満ちていました。
・壁には、横幅4m以上と幅広の手すきの和紙が使われます。表情を出すために、細いこよりのような楮(こうぞ)が貼られていました。
・横長の細いスリットから、小間に差し込む光が入ります。茶室の周囲のヨシを映して、光にはかすかに緑色がかかってます。光はさらに、細いアクリルの柵に反射して、多様な色と明るさに変わります。NHKの番組で、設計した楽さんは「小間は光がすべて」と言っていましたが、その力の入れようがわかります。「視覚には現れない非日常を演出したかった」ということです。うーむ。
・階段を上がると、広間「俯仰軒」(ふぎょうけん)です。ここは地上の茶室。障子や襖で遮られることなく、池の風景が広がり、蘆と蒲が植えられた浮島が左右から張り出してきます。小間とは対照的に、一気に視界が広がりました。
・広間と庭の間には、枠のない可動式のガラスの仕切りが入っています。あまりにもよく磨かれていて、ガラスがあることがわからないほどでした。
・畳からそのままジンバブエの花崗岩が続きます。石の割れ肌が荒々しい風情です。この花崗岩、関が原の石材場で見つけたそうです。1枚15トンの石板が合計31枚使われています。
・床柱は桑が使われています。床の間の框(かまち)にはジンバブエの花崗岩。上辺だけ磨かれて黒く光ります。

いやまあ、すごい贅沢な茶室です。予算の制約を全く感じさせません。完成に至るまでの、設計と施工のせめぎ合いを想像してしまいました。
佐川美術館の茶室は、アフリカの石や、東南アジアの木材、越前の和紙など、各地から様々な素材を集め、それが茶室に合うようにデザインされています。前日に見学した国宝の茶室・待庵がシンプルな侘びを追求したのとは対照的です。待庵は「引き算」の茶室、佐川美術館は贅沢な「足し算」の茶室だと考えることができそうです。
茶道の伝統を守る立場からみれば挑戦的な試みですが、現代に合った空間をつくりたいという意欲は素晴らしいと思いました。ともすれば伝統に縛られ、堅苦しくなりがちな茶の湯の世界に、一石を投じたのではないでしょうか。入口に掲げられた「守破離」の扁額が脳裏に刻まれました。
- 2008/06/22(日) 17:00:00|
- 文化に触れる|
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